ツーリングがてら、ヨーロッパ各地を何度かバイクで走った。
事前にプランを組んで、ホテルを予約しておく必要はまるでない。モーターリングの旅行者が多いので、飛び込み宿泊が一般的なスタイルだからだ。宿は、その日の目的地近辺で夕方早めから捜せば、ほとんどの場合問題はない。
ホテルを捜すなら、Centroなどの表示を追って街や村の中心に行けばだいたい見つかる。ホテルが見当たらないような片田舎なら、ZimmerとかChambreとか、その国の言葉で"部屋"という表示をさがす。民宿である。朝食のパンが素晴らしくおいしいと思ったら、店は出していないが毎朝あちこちに焼きたてパンをデリバリーするパン屋さんの民宿だったり、ドイツの農家に泊まってソーセージ三昧など、予期せぬ楽しみが待っていたりする。
夕闇迫る中、林の中の洋館の宿に飛び込みで泊まった時、夕食の充実ぶりとその格式に驚かされたが、そこはいわゆる"オーベルジュ"。バイクで旅する東洋人を何の抵抗もなく受け入れてくれた。夕食をすませて、うながされるままにマントルピースのある巨大な居間で食後酒を片手に歓談・・・フランス語がからきしダメでも楽しめた(汗)
ローカルな人々との交流があったり、思わぬハプニングに遭遇するのが、この旅のスタイルの魅力。年配者には英語が通じないこともままあるが、そんな時は少年少女が強い見方となる。学校で英語を勉強しているからだ。初めは自分の英語に自信なさそうに話すが、ちゃんと通じるとわかると、東洋人の闖入者とコミュニケーションできたことに喜びの表情を見せたりする。
ヨーロッパの道は、モータリングの旅をよく考慮して設計してあり、長距離移動は高速道路でささっとすませ、下りてから目的地までローカルな街道を行く・・・というパターンで、リスクやストレスをほとんど感じずに旅することができる。やはり、モータリング文化の先進国なのである。
"ユーロ"として経済圏がひとつにまとまりつつあるが、車やバイクで移動すると便宜上の国境があるだけで、ヨーロッパが意外と狭いひとつのエリアであることが実感できる。冷戦構造の終焉を見た現在、陸続きの国々がそれぞれの文化を尊重しながらひとつに統合されていくのは、ごくごく自然な流れなのかもしれない。
#写真は、イングランドの山あいの夕暮れ。この先、田舎道が延々と続き、宿がなかなか見つからずに往生した(笑) / October, 1984 ; Minolta CLE